ショッピングバッグやレジャーシートに使われるPPクロス生地とは?特性と製造工程をご紹介

ショッピングバッグやレジャーシートに使われるPPクロス生地とは?特性と製造工程をご紹介

今回は、素材の中でも比較的多くのご質問をいただく「PPクロス生地」について、その特性や製品化のプロセスを交えながらご紹介いたします。「PPクロス」は、ポリプロピレン(PP)を格子状に織った素材を指します。一見耳慣れない名称ではありますが、実は身近な製品に多く用いられており、たとえばIKEAの青いショッピングバッグや工事現場で見かけるブルーシートなどが該当します。また、ビニールとの見分けがつきにくく、ビニールシートの素材とIKEAのショッピングバッグが似ていることから、IKEAのバッグをビニールバッグと呼ぶ方もおりますが、PPとビニール(PVC)は別の素材になり、PP耐熱性・耐久性・環境性がPVCよりも高いのが特徴です。

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PPクロス生地の構造と特長

PPクロスは、ポリプロピレンのペレットを溶解し、糸状に押し出して紡績したうえで、格子状に織ることで形成されます。この工程により、非常に軽量でありながら優れた強度を持ち、水にも強く、表面はややザラつきのある独特な風合いが生まれます。

 

主な用途としては、ショッピングバッグ、土のう袋、フレコンバッグ、レジャーシートなどが挙げられ、耐久性・防水性が求められる用途に多く採用されています。

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PP素材とPE素材の比較

レジャーシート等では、PPのほかにPE(ポリエチレン)素材も使用されることがあります。以下に両者の比較を簡潔にまとめます。

 

PP素材の特長

高強度・耐破損性に優れる

耐熱温度は約100120℃

防水性が高く、屋外使用に適する

軽量かつ印刷適性が高い(ラミネート加工での表現力が豊富)

紫外線や熱に対する耐候性が良好

 

PE素材の特長

柔軟性があり、しなやかな触感

耐熱温度はおおよそ80℃

防水性はあるが、引張強度はPPに劣る

比較的安価で、コスト重視の案件に適する

紫外線には弱く、長期間の屋外使用には不向き

 

このように一見同じような素材に見えても得手不得手があり、製品の使用環境や価格帯、耐久性の要件に応じて適切な素材選定が求められます。なお、弊社が提携しているベトナム国内の製造工場では、PPクロスの生産が主流であり、PEの紡績ラインは今のところ確認されておりません。

 

PPクロス製品の印刷技術とラミネート加工

PPクロス生地は、ポリプロピレンフィルムにデザインを印刷し、それを生地に圧着(ラミネート)することで、フルカラー印刷が可能となります。印刷方式には主に「グラビア印刷」が用いられます。

 

グラビア印刷とは?

凹版印刷の一種で、シリンダーに彫り込まれた凹みにインキをためて転写する方式です。写真やグラデーションなどの繊細な色調表現に優れており、食品パッケージ、化粧品ラベル、レトルト袋などでも採用されています。印刷の精度が高く、大量印刷時のコスト効率にも優れています。ただし、版代が発生するため、小ロットには不向きです。

 

ラミネート加工には「マット(艶消し)」と「グロス(光沢)」の2タイプがあり、製品の仕上がりイメージに応じて選択されます。

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左は艶消し、右は光沢のフィルムを選択。

 

単色ならシルク印刷が価格競争力あり

フルカラー印刷が必要ない場合はシルク印刷がおすすめです。(シルク印刷についてはこちらの記事をご参照ください:シルク印刷について

 

シルク印刷(シルクスクリーン印刷)は、版の上にインクをのせ、スキージーと呼ばれるヘラでインクを押し出して印刷する方法です。主に単色や少ない色数のデザインに適しており、発色が良く、厚みのあるしっかりとした印刷が可能です。布やビニールなど、様々な素材に対応できる汎用性の高さも特徴です。小ロットやロゴ印刷に向いており、PPクロス製バッグにも頻繁に使用されています。工場の設備によっても変わりますが、4色程度(多いところは16色程度)は重ね塗りが可能である場合が多いことと、初期投資も含めた印刷コストはシルク印刷がお安くなります。

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20ftコンテナサイズに近い大型のシルク印刷機もあります。

 

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ロール生地を設置します。

 

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印刷部分です。版画の手法で生地にインクを乗せます。

 

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印刷後は熱風で乾燥させ、またロール生地に仕上げます。

 

製造工程の概要

PPクロスショッピングバッグの製造工程は以下の通りです。

 

1. 生地の製造および印刷

ポリプロピレンペレットを溶解し糸を紡績。PPクロス生地を製織後、印刷フィルムを製作しラミネート加工(マットまたはグロス)を施します。印刷方式は用途に応じてグラビア印刷、フレキソ印刷、またはシルク印刷を選択します。

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上部の三角の部分からペレットを投入します。

 

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長い筒状の部分で溶解しシート状に成型していきます。

 

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シート状の生地を細くカットしていきます。

 

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糸状にカットされたものを巻き取ります。

 

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カットされた糸をそれぞれのロールに巻き付けていきます。

 

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PPクロスのロールが出来上がっていく様子。

 

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各ロールからPPクロスを編み込んでいきます。

 

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2. 生地の裁断

印刷済みの生地ロールを、自動または手動でバッグ寸法に裁断。自動裁断が可能な形状であれば、コスト面でも有利です。

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1台ミシンが映っていますが、縫製と裁断を同時に行っています。

 

3. 縫製・圧着

側面・底面を縫製、または超音波溶着。持ち手はPPテープまたは共生地を使用し、クロス縫製で強度を高めます。

超音波による溶着のイメージ.jpg

溶着の場合は糸は使いません。ただし耐久性は縫製よりも劣ります。

 

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持ち手のPPテープを編んでいるところ。

 

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その後ロールにしてカットして使います。

 

4. 検品・梱包

縫製状態や印刷の仕上がりを検品し、折りたたんで数量ごとに梱包、出荷いたします。しかしながら弊社では、工場での検品は基本的にはAQLでの抜き取りとなるため、日本向けは全て第三者検品場での100%検品を推奨しております。

 

最低ロット・工場対応について

弊社では、ベトナム国内の大手PPクロス工場3社と提携しております。これらの工場では高い自動化率を誇り、標準的な最低ロットは1SKUあたり20,000枚からとなっております。これは、紡績〜印刷〜裁断の各工程が効率化されており、少量では逆にコストが割高になるためです。その一方で、大量生産によって単価を大幅に抑えられるため、販売促進用ノベルティやOEM製品において、高いコストパフォーマンスを実現できます。

 

素材選定と環境配慮について

PPクロスは、100%バージン材(新素材)だけでなく、リサイクル材を数十%配合することも可能です。コストメリットのある反面、リサイクル材特有の臭気が生地に残る場合があるため、用途に応じた調整が推奨されます。バージン材80%、リサイクル材20%程度であれば、臭いも気にならないレベルに抑えられます。

 

一方で、近年は環境への配慮がますます重要視される中、工場によっては使用済みのPPバッグやPETボトルの回収と再資源化に積極的に取り組んでいるところもあります。こうした工場では、リサイクル材のみを用いた生産工程を確立しており、100%リサイクル素材から生成されるペレットでも、従来のリサイクル品にありがちな嫌な臭いを極力抑える技術を持っています。また、色合いについても、バージン材(新品の素材)に近い鮮やかさと均一さを実現しており、見た目の品質を高く保つことが可能です。このような高度なリサイクル技術により、環境負荷を軽減しつつも、品質面での妥協を許さない製品づくりが進んでいます。

 

最後に

PPクロス製のショッピングバッグやレジャーシートは、軽量・高強度・防水性・デザイン対応力の高さという特性を活かし、販促ツールやエコ商材として非常に有用です。ベトナム工場による大量生産体制を背景に、短納期かつ競争力のある価格でご提供可能です。製品企画・見積り・サンプル対応なども承っておりますので、ご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください。

 

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