弊社のブログをご覧いただき、まことにありがとうございます。こちらでは日本とベトナムの経済協定について整理したいと思います。
日越EPAとは?その基本情報とFTAとの違い
日本とベトナムは、2009年に「日越経済連携協定(EPA)」を締結しました。これは、両国の経済関係をより強固にし、貿易や投資を促進するための重要な枠組みです。EPAは単なる「関税を下げるための協定」ではなく、もっと広範な分野において両国が協力し合う協定となっています。
■ EPAとFTAの違いとは?
国際貿易の分野でよく耳にする言葉に「FTA(自由貿易協定)」があります。FTAもEPAも一見似たような仕組みに見えますが、その内容には明確な違いがあります。FTAは主に「モノの貿易の自由化」、つまり関税の撤廃や削減に焦点を当てた協定です。一方でEPA(Economic Partnership Agreement)は、それに加えて「投資」「サービス貿易」「知的財産の保護」「人的交流」など、より幅広い経済連携を含んでいるのが特徴です。簡単に言えば、FTAが“モノの流れを自由にする”協定であるのに対して、EPAは“モノ・ヒト・サービス・お金の流れを広くスムーズにする”協定と言えるでしょう。
■ なぜ日本とベトナムはEPAを締結したのか?
2000年代に入り、ベトナムは「世界の工場」として急成長を遂げており、多くの日本企業が現地に進出するようになっていました。日本にとってベトナムは、安定した生産拠点であるだけでなく、将来的な消費市場としても注目されていたのです。こうした背景の中、日本とベトナム両国は経済関係をより深化させるため、2009年2月に日越EPAを発効させました。この協定により、多くのベトナム製品が日本に低関税、または無税で輸出できるようになり、逆に日本からベトナムへの輸出にも恩恵が及びました。実際に、繊維製品や農水産物、電子部品といった分野では、EPAの活用によってコスト競争力が高まり、日本市場への輸出が加速しました。現在では、日越EPAは両国間の貿易において欠かせないインフラの一つとなっています。
実務で役立つ!EPAを活用することで得られる具体的なメリットとは?
日越EPAは「関税が下がる」という点ばかりが注目されがちですが、実際に貿易実務の現場でどれだけの差が生まれるのか? これはなかなかイメージしづらいものです。そこで今回は、具体的な製品を例にとって、EPA活用による“リアルなコスト差”をご紹介します。
関税差で年間96万円の違いにも!?
ある輸入業者が、アパレル系のキャンバスバッグ(HS Code 4202.92)を中国とベトナムの工場からそれぞれ仕入れたとします。仕入れ価格はどちらも1個あたり1,000円、ロット数は1,000個で想定してみましょう。
■ 中国製バッグ(輸入関税8%)
輸入関税 = 1,000円 x 1,000個 x 8% = 80,000円
■ ベトナム製バッグ(輸入関税0%)
輸入関税 = 1,000円 x 1,000個 x 0% = 0円
1,000個のロットでも8万円の差が生まれます。もしこれが毎月の仕入れであれば、年間にして96万円のコスト差。しかもこの差額は「利益」に直接影響するため、非常に大きなインパクトです。輸入ビジネスにおいて、コスト1円の差は利益率に直結します。EPAを活用することで、こうした目に見えるコスト削減が可能になります。
業種別・EPA活用の成功例
関税削減はアパレルに限った話ではありません。実は、さまざまな業界で日越EPAの恩恵を受けている企業があります。ここではいくつかの業種をピックアップして、そのメリットをご紹介します。
■ アパレル・縫製業界
アパレル業界では、中国の人件費上昇により、コストダウンのための生産拠点移転が進んでいます。特にTシャツやバッグ、帽子などの縫製品は、ベトナムでの生産が拡大中。EPAを活用すれば関税0%で日本に輸入できるため、「生産コスト+関税」を考えた時のトータルコストの競争力が圧倒的です。
■ 機械部品・金属加工業界
日本の精密部品メーカーの中には、機械加工やプレス製品の一部をベトナムで生産し、日本へEPA適用で輸出している企業も増えています。製造拠点をASEANに分散させることでBCP(事業継続計画)対策にもなり、同時にEPAによる関税削減でコスト効率も高められる、一石二鳥の戦略です。
■ 食品・農水産業界
ベトナムの冷凍エビや果物などもEPAの対象となっており、日本の食品輸入業者にとっては魅力的な調達先の一つです。EPAにより関税が下がることで、日本市場での価格競争力が高まり、結果として販売拡大にもつながります。
C/Oとは?EPAを適用するために絶対に必要な書類と注意点
「EPAを活用すれば関税が下がる」と聞くと、「ではベトナムで作って日本に送ればお得になるんだな!」と思われる方も多いかもしれません。ですが、ただベトナムから輸入すれば自動的に関税が安くなるわけではありませn。EPAの恩恵、つまり特恵関税を受けるためには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。その中でも特に重要なのが、輸出国側で発行される「C/O(Certificate of Origin:原産地証明書)」という書類の取得です。
■ C/O(原産地証明書)とは?
C/Oは、その製品が本当にEPAの対象国、今回でいえばベトナムで生産されたものであることを証明する書類です。これがないと、日本の税関ではEPAの特恵関税が認められず、通常の関税が課されてしまいます。どれだけ制度が整っていても、この証明書がなければ減税を受けることができません。
実務でのC/O取得の流れ
では、そのC/Oはどのように取得するのでしょうか?輸出者側の基本的な流れを簡単にご紹介します。
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輸出者(ベトナム側)が申請先に書類を提出します。主にベトナム商工会議所(VCCI)や関係する政府機関が申請窓口となります。
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必要書類を準備します。申請には主に以下のような書類が必要となります。
- インボイス
- パッキングリスト
- 契約書(場合により)
- 生産証明(どこで・どうやって生産されたかを証明する書類) -
問題がなければ、船積み後1~2営業日でC/Oが発行されます。費用は内容や申請方法によって異なりますが、おおよそ50ドル程度が相場です。
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日本側の通関時に提出。輸入者は、このC/Oを通関書類と一緒に税関へ提出し、EPAの関税優遇措置を申請します。
一見すると、これらの手続きは少し複雑に感じられるかもしれませんが、どうぞご安心ください。弊社では日本向け輸出において、必要に応じてC/O(原産地証明書)を確実に発行しております。これまでにも多数の発行実績があり、手続きに関するノウハウも豊富に蓄積しておりますので、お客様には安心してご依頼いただいております。
さて、本ブログでは特にEPAについての制度や申請方法についてまとめましたが、EPAは単に制度として存在するだけでなく、実際に使いこなせるかどうかで利益率が大きく変わる重要な要素です。「安く仕入れるにはどうするか?」ではなく、「制度を活用して、どこまでコストを最適化できるか?」という視点を持つことが、これからの貿易ビジネスには欠かせません。弊社では、EPAを活用した輸出入のサポート実績が多数ございます。もし「うちの商品でもEPAが使えるのかな?」という疑問があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
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